理由は明快。だれも幸せにならないし、何の問題解決にもつながらないからだ。そして必ず自分にネガティブに跳ね返ってくる。せいぜい自分のうっぷんが晴れる程度だろうが、その程度のことなら自分の中で消化すればいいだけだ。
読んだ本や、会社の上司の批判をする人は多いが、そういう人は必ず自分の人生をシュリンクさせるから、そもそも割りに合わない行為なのだ。なぜなら、批判・不平・不満・悪口・陰口を言う人に、重要な仕事を任せたいと思う人はいないし、この人についていきたいと思う人もいないからだ。
しかし、今回はさすがにそういうわけにもいかないと感じた。不幸になる人を防ぐために。
先日、札幌の1棟マンションの取引をした。もちろん僕たちは買い手側に立つコンサルタント兼エージェントとしての立場である。
僕たちがつねに行動指針としているのは、「顧客に対して自分たちができる最大のハッピーをもたらすこと」である。だから、物件選定は当然のこと、売主との価格交渉、銀行との融資交渉、管理会社の選定まで、お客様が長期にわたって安定的に副収入源を得られるよう、ベストエフォートを尽くす。
問題は、今回のお客様(買主)が連れてきたアドバイザーだ。いや、それ自体は問題ではなく、ホームインスペクションで有名な、S事務所のコンサルタントの「振る舞い」にある。
そのお客様は、当社のセミナーに参加され、今回の取引につながったのだが、当社のスタッフが渾身で探し当てた、最近では珍しい札幌の優良立地の築浅物件だ。
今回、現地の札幌で契約となったのだが、契約に先立ち、そのお客様が別の会社のコンサルタントを同行させたいという。どうやら契約書チェック・契約同行サービスというものらしい。
もちろんそれは別にぜんぜん構わないのだが、全員が時間とコストをかけて札幌に集結する以上、その場で何か疑問が発生し、契約をやり直す、という無駄な時間や労力は避けたい。
そこでスタッフに指示したのは、事前に契約書と重要事項説明書を渡し、あらゆる疑問点をすべてクリアにしてもらい、納得して契約にあたってもらうことだ。
契約の翌日、スタッフからの報告を聞いて唖然とした。まず、やってきたS事務所のコンサルタントは誰にも名刺を渡さなかったという。どんな立場であれ、ビジネス取引の場に同席するからには、きちんと名刺交換をするのが社会人としての礼儀というものだ。
もし名刺をきるような役割ではないというのであれば、その場で発言などするべきではない。しかし、ちょっと現地を見ただけで、調べもせず「越境していますね」(実際には越境などしていない)、とか、「こんなリスクがありますね」(不動産投資固有のリスクであり、当たり前の話)とか、「わりとちゃんとやってるみたいですね」などという、失礼な発言のオンパレード。
その場には、売主、売り側の仲介会社、施工会社、管理会社(この段階では候補)が全員集結していたが、通常の契約の場ではありえない、重箱の隅をつつくようなコメント。
本来、施工状態のクレームを言うなら、契約前にチェックし、書面で伝え、そこを改善してから契約に臨むのが筋だろう。とにかく「なぜ今そんなことを言うのか」という、KY的発言だらけだったのだ。(もちろん、全部というわけではなく、必要な指摘もあったのだが)
当たり前だけど、M事務所の担当者は、顧客の利益のために行動しようとしているのだと思う。確かに施工不良や欠陥など、不動産業者の中にはよろしくない人、よろしくない物件もあるから、彼らのようなサービスは、知識のない消費者にとっては安心できる強い味方なのだろう。
しかし、S事務所の担当者に欠けていたのは、「その発言、その行動、その振る舞いが、本当に顧客のハッピーにつながるか」という視点だ。
ではなぜこれが不幸な顧客を増やすことにつながるかというと、こうした無礼な人とつきあっているがゆえに、関係者全員からそっぽを向かれるリスクがあるからだ。そりゃそうだろう。誰だってプライドを傷つけられたり、合理的な根拠なく批判されたり、慇懃無礼な態度をとる人とつきあいたいとは思わない。
当社、つまり買い主側のコンサルタントにとっては、顧客への説明が十分できていないとして、売主や売り側の仲介業者から、レベルの低い会社だと思われてしまう。つまり、我々の信用を失墜させ、今後の取引に支障をきたすことになる。そしてこれは、我々のお客様に対する情熱を冷まさせることにつながる。しかしこの際、そんなことはどうでもいい。
問題は、S事務所の担当者の失礼極まりない振る舞いが、売主を激怒させ、管理会社をあきれさせてしまったことだ。(本人は別に失礼だという認識はなかった模様・・・当たり前か)
契約の場では全員大人としての対応をしてくれたそうだが、あとからクレームのオンパレード。売主は「極めて後味の悪い契約だった」と。管理会社の担当者も、「こういう失礼なコンサルタントとつきあうようなオーナーの物件管理は躊躇する」と言う。
取引は、双方がメリットを感じ、双方が合意して成り立つもの。顧客が偉いわけでもないし、客だからといって何を言っても許されるわけではない。売主だって買い手を選ぶ権利がある。誰でも気持ちのよい取引をしたい。今回は売主が大人だったため無事に終了したが、通常の取引であれば、とっくに決裂している。
もし、この取引が決裂した場合、このお客様は本物件を取得することができず、副収入源を得るチャンスを失ってしまう。では、その場合の機会損失はだれが責任を持つのか?S事務所か?違う、お客様だ。では、S事務所の担当者は、そのリスクも想定に入れた上での振る舞いだったのか?
「物件はまだほかにもある」と言うかもしれないが、このお客様は外資金融にお勤めであり、銀行融資が厳しい状況なので、そうそうチャンスが巡ってくるわけではない。
あるいはもし、管理会社に嫌われ、客付けや賃貸管理に力を入れてもらえなくなってしまったら?そのリスクは誰が負うのか?M事務所か?いや違う。お客様だ。
「管理会社はほかにもある」と言うかもしれないが、不動産業界は評判が伝わるのが速い。そして札幌という、首都圏よりも狭い商圏なのでなおさらだ。「あのオーナーは面倒だ」という評判が立ち、どこも管理を引き受けてくれない事態を想像すると、ゾッとする。(もちろん、そんなことはめったにないけど)
不動産投資とは、賃貸経営という事業である。そしてそこには、管理会社という重要な事業パートナーが欠かせない。特に東京のお客様であるから、札幌という遠隔地ゆえに、管理会社との連携が、事業成否の重要な要素のひとつだ。
もうひとつ後日談があり、S事務所から火災保険に関しても横槍が入り、待ったがかかった。今回のアパートローンは火災保険の質権設定が条件であり、決済まで時間がない。そういう状況をM事務所の担当者は知らないのだろうが、銀行の融資担当者を、時間がないと焦らせることになってしまった。
確かに保険会社によって保険料は異なるが、そもそも銀行員に嫌われるようなことをして、そこまで自分の利益を優先したいのか?(ちなみに僕たちは第三者のコンサルタントとしての立場を貫くため、保険の代理店契約はしていない。しかしS事務所は保険の代理店になっているそうだ。いったい彼らは本当に中立なのか?)
彼らも本来は顧客の利益を守るために商売をしていると信じたいが、彼らは実需物件を中心に仕事をしているからわからないのだろう。つまり、「不動産投資はいろんな関係者のパートナーシップによって運営される事業である。そして、そのパートナーとは対等の関係である。」という視点が完全に欠落している。
自分が自分がという視点での言動であり、欠点の指摘にこだわるあまり、関係者への配慮を欠いた低次元の行動だ。そしてそれが、最終的には顧客の利益を損なってしまうのだ。コンサルタントが顧客の幸せの妨害をして、いったいどういう存在価値があるというのか?
僕はS事務所のことはよく知らないから、S事務所の全員がこういう人だと言うつもりはない。たまたまだったのかもしれないし、何か合理的な理由があるのかもしれない。
その担当者は、50歳を過ぎている感じであるそうで、本来はいい人なのだろう。職場では尊敬され、家庭ではよき父親として存在感があるのだろう。そしておそらく、知識も経験も豊富で、不安な消費者からは頼りにされるのだろう。
もちろん悪徳業者は存在する。そういう輩から消費者を守るには、性悪説に立って物事を見るという視点は大事だ。しかし、人間の活動の本質は、感情を持つ人と人とが織り成しているのだということを忘れてしまうと、本人が意識しないところで顧客を不幸にしてしまいかねない。
本ブログの読者も、「コンサルタント」「アドバイザー」と称する人を使う場合は、「この人の行動指針は何か?」という視点を持ち、「顧客の目先の満足を満たすことが、長期的な本当の満足につながるわけではない」ということを忘れず、よくよく選んでもらいたい。
もちろん、僕たちも不動産投資コンサルタントを標榜しているだけに、お客様にはそういう視点で僕たちを吟味してもらいたいと思っている。そして、よいパートナーシップを築こう、とお互いが納得し、ハッピーに向かって一緒に成長していきたいと思っている。
S事務所の人が見たら、たぶん激怒するだろう。それでも、不幸な人が増えるよりはマシだ。本コラムがひとつの視点として、読者に考えるきっかけを提供できたとするならば、僕たちが批判・糾弾されても、一定の価値があるのだと思う。
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私も最近、契約関連で激怒しました。
社会人以前の問題で、人としてどうあるべきかを考えなくてはいけない人とビジネスをするのは本当に辛いですよね。
本当におつかれさまでした!
でも午堂さんであれば、本件でさえもご自身の血肉にできると信じています。
同じ大学学部の後輩より
そうそう、社会人以前の問題の人いますよね。
でも、自分ももしかしたらそういう振る舞いをして、他人を怒らせていることもあるのですが・・・(苦笑)
おお。。同じ大学学部とは、中央・経済なんですね!
同じ大学出身として午堂先輩のご活躍はうれしいです!
午堂さんの印象が、執着しない自然体
さすが素晴らしい経営者の器だと感心しました。
ありがとう が返ってくるから嬉しい。楽しい!! だから働きたいんだ!!
と、本心で話してくださった事が、とても心に残っています。
不動さんをプレミアムの地味さと笑・誠実さで塗り替えてください。